大判例

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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)237号 決定 1956年9月19日

抗告人 水野勝次(仮名)

主文

本件の抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は「原決定を取消す。本件を神戸家庭裁判所へ差戻す」との裁判を求め、その抗告理由は別紙記載の通りなので案ずるに、本件記録を査閲するに抗告人が審判を求める理由は抗告人はその先代水野太郎が大正一一年○月○○日死亡したのでその家督相続をしたが当時幼齢であつたのでその親権者水野まつは抗告人が先代から相続した財産と鮮魚販売と仕出し業をあげて原審の相手方金田正吉にその管理を委任しその後右管理は終了したので右管理の計算を求めると言うに帰し、抗告人が不在者であり右相手方が抗告人の財産を管理したとか、又相手方が抗告人の後見人としてその財産を管理したとかについては原審において抗告人の主張せなかつたところであり、原審が本件申立は家庭裁判所の権限に属しないものとして申立を却下したのは相当であり、本件抗告はその理由がないのでこれを棄却し、抗告費用は抗告人の負担すべきものとし主文の通り決定する。

(裁判長判事 田中正雄 判事 神戸敬太郎 判事 松本昌三)

参照

抗告の理由

原審における本件申立却下決定の理由は要するに本件が家庭裁判所の審判権の範囲に属せないというにあります。抗告人が原審に本件審判を申立てた理由については同申立書に詳細記載した通りであつて、第一に申立人が不在者でありますから家事審判法第九条第一項甲類第三号民法第二十五条によつて本件が家庭裁判所の審判権の範囲に属するものと主張するのです。即ち抗告人は昭和二十五年○月○○日以降不在者となりその後昭和二十七年○月相手方金田正吉の管理人としての権限は消滅したのです。第二に本件抗告人が不在者でないとしても相手方金田正吉は抗告人の後見人であつたものと認めるのを相当としますから家事審判法第九条第一項甲類第二十一号に該当しますから之亦家庭裁判所の審判権の範囲に属するものと思料します。第三仮に相手方金田正吉が親と言うのであれば親としての管理計算を求むと言うにありますから不在者又は後見の規定が準用されますから之亦家庭裁判所の審判権の範囲に属するものと思料します。

原決定は審理を悉さず抗告人の右申立を排斥したのは不当でありますから右決定を取消し本件を更に審判せしめるため原家庭裁判所に差戻しせられるよう本件抗告に及んだ次第です。

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